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石田俊正(助教授) 分子研リポート2004 | 分子科学研究所

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Academic year: 2018

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(1)

244 研究系及び研究施設の現状

石 田 俊 正(助教授)

*)

A -1)専門領域:計算化学、理論化学

A -2)研究課題:

a) ab initio 計算からのポテンシャル面の自動的・効率的生成 b) 多環芳香族分子を触媒とする、星間空間での水素分子問題の解明 c) NiC l 分子の精密計算

d) フォトクロミック分子の光転換反応の理論的研究

e) らせん不斉を有する縮合芳香族化合物の理論スペクトルによる絶対配置の決定

A -3)研究活動の概略と主な成果

a) 最新のab initio計算手法と組み合わせ可能なポテンシャル超曲面生成法としてIML S /S heaprd法を提案している。こ の方法とその応用した結果について,B ayesian解析の適用も行った。今年度は IML S /S hepard法の多原子系への応用 として,H4系への適用と5原子系以上へのアプローチについて述べる。5原子以上の系に対しては,独立な内部座標 の定義を行う必要がある。5原子以上の系については,核間距離の数が自由度を上回るので,独立変数として核間距 離をとれなくなる。この際には,特異値分解法を使って,核間距離から独立変数を定義する必要がある。H4について は,B oothroydらが多参照 C I による 6,101点の計算結果を報告し,さらに,最近 48,180点の ab initio計算に基づく解析 ポテンシャルを提案している。ここでは,6,101点の計算結果からポテンシャル面を構築した。ポテンシャル障壁を 形成するあたりの等高線が異なっている。内挿点 2,000点のみを考えた場合は,1,000 点のみを考えた場合と同様な 等高線が得られ,考えている点に近い1000点程度を考えればこの系の場合よいことがわかった。(Northwestern大学 S chatz 教授との共同研究)

b) 水素原子移動反応では,B 3L Y P では遷移状態の相関エネルギーを過大評価し,MP2 では過小評価する。ナフタレン 陽イオンを触媒とし次の2つの素反応からなる水素分子生成反応を想定して,2個の水素原子から1個の水素分子 を生成する反応経路の再検討を行った。T urecek は,水素原子移動反応の B 3L Y P と MP2 の活性化エネルギーの誤差 を相殺する方法として,B 3L Y P の最適化構造を使って得られた B 3L Y P と PMP2 の活性化エネルギーを平均する方 法 B 3L Y P-PMP2を提案した。B 3L Y P での構造を基準とする T urecek の方法 B 3L Y P-PMP2に加えて,MP2 での最適化 構造を基準とする方法PMP2-B 3L Y Pを用いて活性化エネルギーを見積もった。2-ナフタレニウムイオンを介する反 応についても PMP2-B 3L Y Pで活性化エネルギーの大きな低下が見られた。4a- ナフタレニウムイオンを介する反応 の場合,PMP2/6-31G**で3.64 kcal/mol程度だった活性化エネルギーが,PMP2-B 3L Y Pでは0.68 kcal/molに低下した。 このように,B 3L Y PとMP2で求めた活性化エネルギーを平均すると,より適切な活性化エネルギーが得られると考 えられる。(静岡大学の相原教授との共同研究)

c) 遷移金属化合物は遷移金属のd電子に起因する多数の低い電子状態を有し,その電子状態間に複雑な相互作用が見 られる。中でもハロゲン化ニッケルNiX (X = F ,C l,B r,I)は低エネルギー領域に多数の電子状態を持つ。本研究では 高レベルの ab initio計算により NiC l をはじめとする NiX の電子状態を予測し,実験結果と合わせて電子構造に関す る手がかりを得ることを目的とした。g 関数を含む A NO または A NO 相当の大規模基底を用い,C A S S C F に基づく MR S D C I+Q計算に相対論補正を行い,ポテンシャル曲線を得た。実験で報告されている X および A 両電子状態に対

(2)

研究系及び研究施設の現状 245 し,平衡核間距離は実測値と 1% 以内で一致した。ポテンシャル曲線から得た振動数はω≒400 cm–1となり,これも 実測値とほぼ同じ値となった。これまでに電子スペクトルにより20000 cm–1付近にいくつかの電子状態が報告され ているが,今回得られた電子構造と比較すると,これらはNi

+

[

2G 3d84s1]または[2P 3d84s1]から生じた状態である可

能性が高い。同様に13000 cm–1付近で観測されている状態はNi

+

[

2D 3d84s1]から派生したものと考えられる。本研究

の結果は NiC l の電子構造を明らかにする手がかりとなると期待できる。(静岡大学谷本教授との共同研究) d)光の照射により可逆的に構造が変化する分子はフォトクロミック分子と呼ばれ,感光材料,光記録,光スイッチなど

の機能物質として利用できる。ジアリールエテンは光照射により開環・閉環反応を起こすフォトクロミック分子と して知られている。ジアリールエテンのモデル系として,シクロヘキサジエン(C HD)からヘキサトリエン(HT )への 光開環反応の研究を行った。C HDが光照射により電子励起された後,基底状態へ無輻射遷移する過程を解析し,C HD と HT が生成する選択性について考察した。S0,S1,S2の断熱・透熱ポテンシャルを多参照配置 C I 計算に基づき決定 した。状態間の円錐交差点を求め,対応する非断熱遷移確率を Z hu-Nakamura理論で計算した。1

1

B(S2)から 2

1

A(S1) への遷移は分子のC2対称性を壊す運動で起こる一方,2

1

A( S1)から 1

1

A (S1)への遷移は5員環生成への変形によっ て起こることがわかった。(中村所長,南部助手との共同研究)

e) らせん不斉を有する縮合芳香族化合物について,密度汎関数法による理論円二色性スペクトル(理論C D )と実験に よる円二色性スペクトル(実験C D )を比較することで,絶対配置の決定を試みた。T D D F T /6-31G(d,p)の計算を行い, 旋光強度からスペクトルをシミュレートした。理論スペクトルは実験スペクトルの特徴をよく再現しており,スペ クトルの比較から絶対配置を決定できることがわかった。(静岡大学工学部田中康隆助教授との共同研究)

B -1) 学術論文

J. AIHARA and T. ISHIDA, “Aromatic Character of Annelated Dimethyldihydropyrenes,” J. Phys. Org. Chem. 17, 393–398

(2004).

M. HIRAMA, T. ISHIDA and J. AIHARA, “Possible Molecular Hydrogen Formation Mediated by the Inner and Outer

Carbon Atoms of Typical PAH Cations,” Chem. Phys. 305, 307–316 (2004).

M. WATANABE, H. SUZUKI, Y. TANAKA, T. ISHIDA, T. OSHIKAWA and A. TORI-I, “One-Pot Synthesis of Helical

Aromatics: Stereoselectivity, Stability against Racemization, and Assignment of Absolute Configuration assisted by Experimental and Theoretical Circular Dichroism,” J. Org. Chem. 69, 7794–7801 (2004).

B -10)外部獲得資金

基盤研究(C ), 「局所内挿法と分子力学法を組み合わせた大規模系ポテンシャル面構築法の開発」, 石田俊正 (2004年-2007 年).

基盤研究(C ), 「最新 ab initio法と組み合わせ可能なポテンシャル内挿法の開発と応用」, 石田俊正 (2000年 -2002年). 特定領域研究, 「分子物理化学」, 「A b initio法と融合したポテンシャル面自動生成に関する研究」, 石田俊正 (2000年-2001 年).

奨励研究(A ),「超励起状態からの自動イオン化の理論的研究」,石田俊正 (1997年 -1998年).

C ) 研究活動の課題と展望

ポテンシャル面の生成については,多原子系への拡張を目指している。また,高精度のab initio計算と組み合わせてポテン

(3)

246 研究系及び研究施設の現状

シャル面生成を共同研究にて現在進行中である。

水素分子問題に関する反応エネルギー障壁について,C C SD,QC ISDを使わない簡便な方法で見積もる方法を探索してい る。

*)2004 年 4月 1日静岡大学工学部助教授,2004年 10月 1日京都大学福井謙一記念研究センター助教授

参照

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